メンズスーツの時間

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日本のスーツのルーツ

日本のスーツの歴史は、軍服から始まります。明治時代に遡り、近代的な軍隊を整備する上で、洋服による軍服は不可欠でした。スーツの起源についての説は数多くありますが、衿を大きく開けた今のスーツの形は、詰襟の軍服のボタンを外して、崩したスタイルからきていると言う説もあります。日本人がはじめて着た洋服も軍服に違いありません。一般的にスーツが着られ始めるのは、大正時代頃からで、それまでは上流階級御用達のテーラーがいるくらいでした。

絹製品などの繊維産業から紡績産業、更に織物産業へと発展していく中で、最終的な製品としてスーツが一般に作られるようになってきました。それに伴って仕立屋という職業が確立されていきますが、オーダーで作られていたことは言うまでもないことです。アパレル産業として、縫製産業が出来上がっていく過程で、縫製の下請け企業として縫製会社が数多く出来上がっていきました。しかし、今のよう大量生産する既製服の工場ではなく、大手の紳士服店の委託縫製を行うもので、今のような既製服のスーツが出回るのは戦後の話です。

戦後縫製の分野で大きく変わったのは、オーダースーツから既製服のスーツへと製作されるスーツの内容が変わったことです。この変化により日本のテーラーの技術は衰退したと言えますが、イギリスやイタリアでも、このような工業化の波は被ってきていました。しかし、それでも伝統が守られているのは、消費者のスーツへの認識の違いと言えるでしょう。

日本のスーツの傾向と対策

あるブランドの品質のレベルをみる場合、最高級品と廉価品を見ればそのメーカーのスタンスが分かります。特に廉価版の製品を見る事で、そのブランドが許容するコストの省き方がよく分かります。ブランドとして許せる品質の目安が廉価版の製品に現れます。金儲け主義のブランドであれば、際限なく品質を落としますし、やたらと高い高級品を販売します。スーツも同じことで、いくら最高級なスーツを一部で取り扱っていても、ひどい安物を売っているようでは消費者から信用されるはずもありません。廉価版にこそブランドのステータスが現れると思ってください。

日本のスーツと傾向日本人がスーツを買う場合は、日本人に合わせたスーツが良いに決まっていますし、海外のブランドであれば、少なくとも国内でライセンス生産されたスーツの方が日本人にはあっていると言えます。ただし国内メーカーがライセンス生産をしているからと言っても、国内で作られているとは限りません。既成の安いスーツであれば、ほとんど中国製です。

中国製が一概に悪いとは言えませんし、以前のレベルから比べれば飛躍的に向上している事は確かです。どこで作られ様と、良いスーツであれば良いわけですが、それを見抜く目を養う事が重要です。

オーダースーツが良いと言うのは決まっていますが、海外から職人を呼んで恐ろしく高いスーツを作るのであれば、その分の費用で国内のテーラーでスーツを作ったほうが最善です。スーツを一着作っただけでは、本当のところ100%満足がいくスーツは出来ません。既製服もオーダーで作るスーツも結局のところ、品質を見抜く目をもつ事が重要と言えます。

日本のスーツに明日はあるのか

今のままでは日本のスーツは衰退するでしょう。人材が育っていません。産業の構造的な問題で、人材育成の教育機関がありません。イギリスでもイタリアでも、メンズスーツの縫製を学ぶための教育機関があり、人材育成を行なっています。

自動車の企業がF1へ参戦する理由は、優勝して企業イメージを高めたいと言う事と、実際のレースに参戦して得られたノウハウを、一般車両にフィードバックする事が狙いです。それと同じような技術的な向上に関して日本のアパレル企業は怠っています。下請けの縫製企業に製造委託して、デザインやマーケティング、コスト管理のことばかり気にしています。今日の利益より、明日の利益と言う事です。モノ作りの本質を忘れてしまえば業界での競争力も失ってしまい、消費者からもソッポを向けられます。

日本のテーラーの技術力は、世界レベルと言われますが、あくまで個人レベルの話で、既成品のスーツと比較をした場合、同じ価格の海外ブランドと比べれば、その品質の差は歴然です。世界的な産業の分業化で、日本のスーツが衰退しても、代わりはいくらでも有りますから、問題はありませんが、日本人としては残念です。