メンズスーツの時間

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ミラノとナポリ

イタリアのスーツの流れは、ミラノとナポリに分けられます。北と南では同じイタリアでも、作り方が全く違います。
ミラノは北イタリアで、工業や商業の都市で、デザイン的に洗練された感じがしますが、ナポリは南イタリアの代表的な都市で、観光とピッツァとイタリアンマフィアで有名です。ご承知の通りイタリアンファッションに限らず、デザイナーズ系のブランドが隆盛を誇っているのはミラノです。ミラノはビジネスとしてデザイン産業が分業化され整備されていて、ロンドンやパリと変わらない、グローバルな都市です。

イタリアのスーツスーツはナポリと言われるように、独特のテイストがナポリのスーツにはあります。ミラノで作られるスーツより個性的ですが、それだけにイギリスのサビル・ロウなどのトラディショナルと違ったテイストがあります。ミラノが大規模なビジネスとしてプレタポルテと言われるレディメイドのスーツを作っているのに対して、ナポリはサルトもしくはサルトリアと呼ばれる仕立屋の工房で、ス・ミズーラと言われるフルオーダーであり、手縫いで作られています。

オーダーメイドのスーツに関しては、ミラノよりナポリの方が、イタリアのスーツの特色がより濃く表現されて、伝統的な技術が継承されていると言えます。

クラシコイタリア再考

クラシコイタリア協会に参加しているメーカーの既成服のスーツの総称ですが、イギリスのサビル・ロウなどのトラディショナルなスーツにならいながらも、伝統的なテイストに独自の解釈を加えたデザインで、全てハイポイントと言われるボタンからウエストの絞りまで高めのデザインが特徴です。上襟と下襟の縫い目の付け部分までを意味する“ゴージライン”を高めにすることで、クラシックな雰囲気とともに、新鮮なテイストを演出したものです。

もともと今のナポリ系のブランドが集まって、ハンドメイドの技術の向上を図るための団体ですが、日本の既製品のスーツとは次元が違うスーツであり、既製品のメーカーが目指す最高の既製品のブランドと言えます。

斬新なデザインと、全てハンドメイドで作られる既製品のクラシコイタリアは、一見相反する要素で出来上がった既製品と言えますが、これこそがイタリアのモノ作りの象徴といえるものです。革新と伝統の融合がイタリアンデザインの真髄と言えるでしょう。

ナポリのスーツとサビル・ロウ

まず、日本の職人さんに理想のスーツと問えば、どちらかの名前が出るほど、両者のステータスは最高と言えます。日本のオーダーメイドは、背広と言われることからも分かるとおり、サビル・ロウのスーツがお手本で、多くのスーツ職人は、サビル・ロウのスーツ作りを目指しています。

それに比べて、ナポリのサルトリは作り方が独特で、型紙を作らず、生地に直接スーツ専用のチョ-クでスーツの裁断イメージを描いていくそうです。その上で仮縫いに時間をかけ、立体的な補正を加えていくもので、イギリスの伝統的な手法とはかなり違ったやり方です。日本のテーラーが真似しようとしても、デザインは真似られても作り方までは難しいと言えます。採寸のデータとしては仮縫いの段階のものを保存しますが、基本的に同じデータを使ってスーツを仕上げる事はありません。

イギリスのサビル・ロウスーツの正確無比な、カッチとしたスーツに比べれば、ナポリのスーツは独特の柔らかさが特徴です。対照的なテイストですが、行き着くところは同じであり、第二の皮膚と言われる最高の着心地と言えます。ナポリのスーツは、イタリア人の美意識によって、自由奔放でありながら着ている人の感性に訴えかける、想像性豊な魅力的なスーツであることは、確かです。