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不動のスーツイコールクラシックではない
不動のスーツとは、クラッシックなスーツと思うとクラッシックって何だという疑問が浮かびます。イギリスのサビル・ロウやクラシコイタリアに代表されるイタリアのスーツでも、どのようなモデルをクラシックと呼べばいいか迷うところです。南イタリアのサルトリア(仕立て屋)では型紙は紙には書かずに、頭の中に書くと言われるぐらいですから決まった形は無いのです。
不動のスーツとは、人間工学的に計算し尽くされたスーツと言えます。人間工学というとコンピューターで計算されたデザインかと言えば、分類されたパターン的な解析はコンピューターで出来ても、個人個人の体形にあわせた計算は出来ません。それにスーツを美しく見せるとなると、美意識は人間しか持ち合わせていません。
不動のスーツとは、仕立て職人の手と頭の中にあります。注文主のわがままで、スーツのデザインはどの様にも変化しますが、それを包み込んで更に着心地の良く仕上げられたスーツが不動のスーツと言えます。
不動の定番スーツ
不動のスーツではありませんが、不動の定番スーツと言うモノが世の中にはあります。ファッショントレンドに左右されないモード(様式)として確立されたファッションがあります。
例えばアイビーは、時代に左右されずにアイビーのデザインは定義づけられ不動のデザインになっています。それを逸脱すれば、アイビーとは認められません。アイビーがファッションとして特殊なのは、それを着るもののライフスタイルと深く関わっているからです。
日本にアイビーを紹介したのは石津謙介氏のVANですが、石津氏はファッションだけでなくアメリカンフットボールなどのスポーツや家具・雑貨などライフスタイル全般の紹介に努められていました。このようにアイビーは時代を象徴するライフスタイルとして、様式化されたといえるでしょう。
ここまでくると、良い悪いの問題ではなくなってしまいます。
不動である事の意味
オーダーでスーツを作る場合、オリジナルのデザインであるべきですが、イギリス風でもイタリア風でもそれぞれの決まり事が有ります。決め事には、モードとしての意味合いも有りますが、モード自体はそのスーツを見た人が言うだけのことで、特別スーツとしての着心地や美しさとは関わりのないことです。しかしスーツの着心地やその美しいシルエットを支える部分に関する決め事を外す事は出来ません。
堅苦しいと思われるかもしれませんが、スーツとしてみっともないばかりか、着心地も悪くなります。そのような決め事は、スーツ作りの長い歴史からはじき出されたもので、伝統と呼ばれるものには付き物と言っていいでしょう。スーツも創出されて150年も経ちますから、その意味で生き残っているモードの何れもが、全体のシルエットから細かいディテールに至るまで、それなりの意味と機能を持っていると言えます。
それらを無視した場合は、自ずと悲惨な結果が待っていますが、その前に採寸士の適切なアドバイスがあるはずです。それを無視してまで注文をつけるとすれば、とても勇気のいる事です。
