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アメリカのスーツの特質
アメリカのスーツの歴史は、サビル・ロウに代表されるイギリスのオーダースーツを受け継ぐものですが、最初の入植者がイギリス人であったためと考えられます。アメリカのオリジナルのスーツ作りは、既製服が中心で、オーダースーツの分野では、イギリスからの影響が強いと言えるでしょう。
純然としたアメリカのスーツ文化と言えるものは、ヨーロッパの移民が持ち込んだ、さまざまなスタイルが融合して、ヨーロッパのスーツをベースとしながらも独自のスタイルを作り上げたと言えます。ヨーロッパのオーダーメイドを基本としたスーツ作りとは真反対の、既製服を前提とした服作りは、アメリカの歴史の浅さを物語ると同時に、新しいライフスタイルを生み出したと言えるでしょう。
ヨーロッパのスーツが、貴族社会の服飾をベースに市民階級が作り上げたのに対して、アメリカのスーツは、その市民階級のスーツをベースに、より広い庶民のための既製服を作り上げたと言えるでしょう。
悪戯にアメリカのスーツを、ヨーロッパのスーツと比べて品質の面で比較しても意味の無い事です。むしろ音楽やビジネスなどのさまざま要素を取り入れた、総合的なライフスタイルとして捉えられるべきで、新しいスーツのあり方を提案するものです。
アメリカのメンズスーツの変遷
スーツの成立はビクトリア女王の頃と言われていますが、その起源はアメリカのサックススーツや、イギリスのラウンジスーツと言われるもので、カジュアルな服として始まったと言われています。どちらにしてもイギリス主導でスーツは発展してきたわけですが、アメリカが独自のスーツを作り始めるのは、経済的に繁栄し始める20世紀初頭からで、その中心にはジャズの影響がありました。
別のカルチャーの影響を受けて服が作られると言うスタイルは、現在のカジュアルウェアやデザイナーの作るファッションではごく当たり前の話ですが、保守的な当時のスーツの世界では、革命といってもおかしくないことで、新しいスーツのスタイルを生んでいったと言えます。
当初のジャズスーツ、ズートスーツと言われるジャズメンたちが着ていた服が流行り、その一方で学生の間で着られていたファッションスタイルがアイビーファッションとして定着していきます。1948年に『エスクアィア』誌で紹介されたボールドスタイルスーツは、アメリカンスタイルとして世界的に広く知られるようになりましたが、いわゆるギャングスタイルと言われる押し出しの強いものです。
第二次大戦を契機に、軍服用に考案されたスーツの大量生産方式により、既製服全盛の時代を迎え現在に至るわけです。その影響下に日本もあるわけですが、悪しきにつけ良しきにつけ、ヨーロッパのスーツとは違ったスーツ文化を創り上げたことには意味があると言えます。しかし一方ではスーツだけでなく、ビンテージジ-ンズに見られるような、ファッション全体の温故知新的なムーブメントも起こっており、フォーマルやカジュアルを問わず、本物志向になりつつあると言えるでしょう。
アメリカンモデルの種類
アメリカのスーツは、モデルでカテゴリー分けするとさまざまな種類が存在します。ジャズ・スーツに始まりアメリカン・トラディショナル・モデルやアイビー・リーグ・モデル、コンチネンタル・モデル、ナンバー・ワン・サックやナンバー・ツー・モデルの他にもブリティッシュやイタリアンなど、いちいち数える暇がありませんが、これだけモデルがあるのは既製服のパターンを前提としているからです。
イギリスやイタリアでこれほどのモデルがないのは、オーダーが基本だからですが、同様にカテゴリー分けをするとしたら収拾がつかなくなるでしょう。アメリカのスーツに限らず、スーツのスタイルは、着ている人の出身地や経歴を物語るもので、その意味では、社会的なステータスを表しています。ステータスと言っても、社会的な地位と言う意味だけでなく、考え方や自己主張も含まれます。その意味では、アメリカのスーツのモデルは分かりやすいと言えます。
オーダーでオリジナルのスーツを作る場合、好みとは別に自分を表現するデザインを作り上げるにはそれなりの時間とお金が必要ですが、アメリカのモデルであれば、簡単に主張を持ったスーツが選べると言えるでしょう。そこがアメリカのスーツのミソです。雑多な人種が入り混じるアメリカの社会で、自己主張する事が社会的に求められますからスーツでも同じです。
アメリカのスーツのモデルは、明確なカテゴリーとして、デザインばかりかライフスタイルまで含めたスーツのモデルと言えます。そこにはヨーロッパにおける社会的な柵の無い、ストレートな自己表現が現れ、いかにも自由の苦にアメリカのスーツと言う気がします。
