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基本の要素
オーダースーツを作る上で、フルオーダー、イージーオーダー、パターンオーダーの区別なく、注文をする場合の基本の要素があります。オーダーの基本は、デザインです。 スーツのデザインは、スーツの設計図である型紙で決まってきます。 オーダーの種類に関係なく、型紙の良し悪しがスーツのデザインの良し悪しも決めるため、ある程度決まった型紙の範囲で作られるイージーオーダーやパターンオーダーの場合は、決定的な要素と言えます。
海外の有名ブランドのイージーオーダーやパターンオーダーの場合、型紙は日本人の体形に合わせたものが用意され、機械的に裁断されたサイズモデルに補正を加える方法が取られていますが、基本の型紙のデザインが、体形にあったものである事が前提になります。デザインが良いからと言って、体形に合ってないブランドのパターンオーダーでスーツを作ってしまえば、着心地の悪い、不自然なスーツになってしまいます。
フルオーダーでも基本となる型紙は有りますが、採寸によって型紙を起こしますから、フィットしないという事はありません。
通常フルオーダーで使われる型紙のパターンは、イタリアンクラシックモデル、ブリティッシュモデル、トラッドモデル、スタンダードモデルなどが上げられます。
イージーオーダーやパターンオーダーの場合は、デザイナーがデザインしたパターンに限定されますから、好みのパターンのブランドを選ぶ事になります。
メンズスーツで一番価格を左右するとともに、着心地を決定する要素に、スーツの生地があります。パターンオーダーの場合は、選べる生地の範囲が限定されますから、その点は注意が必要になりますが、価格帯も限定されているため、予算が決まっている場合は、便利と言えます。 スーツの生地は、ピンからキリまでありますが、最近の傾向は細い糸を使った高品質なものが多く出回っていて、イタリアのゼニアやイギリスのバーバリーなどメーカーの生地が最高とされています。 一概に高いから良いと言う事にはなりません。着る目的や、回数によって生地を選ぶ事をお勧めします。高級な生地が必ずしも、丈夫と言うことは無く、それなりに気を使う必要があります。普段職場で着るスーツの場合は、多少着心地が硬くても、太目の生地を使った方が良いと言えるでしょう。初心者のうちは標準的な価格の生地で、好みのものを選ぶ方が無難です。
生地は紺やグレーが基本で、織り柄やなどで色々な生地のバリエーションが有ります。最近ではピンストライプの柄が流行っていますが、地味と思われるくらいのもので丁度良いくらいです。スーツはファッションのベース、キャンバスにあたるわけで、ネクタイやシャツとのコーディネイトで全体の印象を変えていけるものが重宝します。あまり派手な色のスーツは、下品に見えてしまいます。むしろスーツの生地は、カラーと織り柄の組み合わせを楽しみ、気分に応じてシャツやネクタイを選ぶような着こなし方がベストです。基本アイテムのスーツとしては、紺、チャコールグレイが定番で、礼服としてブラックを用意しておくと、大体のところは間に合ってしまいます。
デザインと生地が決まれば、採寸が行なわれますが、採寸の際に気を付けることは、あまりディテールに拘らない事です。 特に衿の幅やボタンの数と位置、ベントと言われるスーツのお尻の部分への切れ込みは、スーツ全体のデザインを構成するもので、極端に変更した場合は、スーツ全体のシルエットを壊してしまいます。 採寸の際に注意する事は、肩周りやウエストの絞りといったスーツの着心地やシルエットに重点置いて、注文を述べる事が重要と言えます。 とは言え、パターンオーダーでは、体のサイズに合わせる採寸だけで、デザインに関しては変更がききません。イージーオーダーでも同じですが、ウエストや肩周りの若干の変更がきく程度で、基本パターンを変更するところまで対応はしてくれません。
はじめてのオーダーの場合は、分からないことが多く、着やすいかどうかも怪しくなるものです。そんなときは、素直にテーラーや担当者に助言を求めた方が良いでしょう。慣れてくれば、袖を通しただけで、サイズが合っているかどうか判断できるようになります。
ベントの意味するところ
オーダースーツには、デザインでイタリアン、ブリティッシュ、トラッドと言った流れがありますが、その他に礼服によく採用されるスタンダードなデザインが有ります。これらのデザインは、時代によってある程度の流行はあるにしても、そのカテゴリーの中でのデザイン変更になります。
これらのデザインで注意する事のひとつに、ベントの形があります。ベントはお尻の部分の切り込みのことを言いますが、堅い話をすればその形から、フォーマル度が決まってきます。もっともフォーマルなスーツはノーベントと言われる、ベントなしのものです。映画などで見るタキシードやイブニングスーツにはベントはありません。もともとベントは乗馬する際にジャケットが捲れないように、考案されたものですから、フォーマルな席にはそぐわないとされていました。
次にセンターベントと言われる、一番普及しているスタイルです。会社などで仕事着として、動きのある場合に、スーツのデザインを保ち、型崩れを防ぎ、動きやすいために、今では多くのスーツのデザインに採用されていますし、一般の冠婚葬祭の礼服にも取り入れられています。その他にアメリカのアイビーリーグのジャケットなどに良く使われている、フックベントと言われる、シングルベントの一種で、切り込みの根元付近を鉤型にフックさせたものがあります。
最近流行のサイドベンツは、センターベンツとそれほどフォーマル度は変わりませんが、デザイン性に振ったぶん、ファッショナブルと言えます。ただサイドベンツは、その切れ込みの深さで、かなり流行を追ったものが多く、流行が去った時には、切れ込みの深いサイドベントはその分流行おくれの印象を与えるだろうことは否めません。サイドベンツは足を長く見せるといわれますが、それはもともと足の長さが標準以上の人の場合で、短足の人が着た場合には、むしろ短足を強調するようになってしまいます。またある程度身長がない人の場合も、サイドベンツの切れ込みが深いとバランスが悪くなります。
ベントに関しては、スーツの流れからすれば、組み合わせが限定されるものですが、おしゃれな人でないと、意外と見過ごされがちな部分です。イタリア系のスーツであれば、ノーベンとかセンターベント、イギリス系のスーツであれば、センターかサイドベント、アメリカ系はセンターベントが主流です。ただ今ではイタリアのブランドもイギリス風のスーツを発表していますから、クラシックなデザインに拘らなければ、結構いい加減です。
スーツの基本の基本
スーツを選ぶ場合、デザインや生地、縫製と色々な要素があるにしても、最終的にはスーツのシルエットが如何に綺麗に仕上がっているかに関わっています。極端な撫ぜ肩やお腹が出ていても、フルオーダーであれば、体形を補正することでカバーでき、それなりのシルエットに仕上げられます。
デザイナーズブランドなどの既製服のスーツのいけない点は、着る人の標準的な体形を想定してデザインされていることで、幾つかのサイズモデルがあるにせよ、それなりの標準規格に合わない体形の人は、シルエットを崩さざるを得ません。単純な話ですが、既製服のスーツとオーダースーツの根本的なちがいはその辺にあるのです。
カジュルウェアの世界では、服に体を合わせると言った本末転倒な事も許されますが、メンズスーツでそんなことをしていたら、仕事になりません。スーツとは実用服であって、趣味の服ではないと言い切れる部分もあります。スーツを帰宅した後まで着ている人はいません。スーツは外出して、他の人と合う時のための服であり、スーツの種類は、合う人や場所や時間によって分かれるものです。言わばパブリックな服と言えます。昔のサラリーマンの映画を見ると、帰宅したサラリーマンは、一様に和服に着替えてリラックスしています。外国映画でも然りで、ガウンなどを羽織って、リラックスしています。
スーツはパブリックウェアと考えれば、まず基本はご自分の自己表現のひとつと考える事です。仕事で取引先と合う時、ご自分をどう見て欲しいかと考えた場合、服装が最もインパクトがあるアイテムと言えます。ヨレヨレで皺だらけのスーツを着ていれば、だらしない人物と見られてしまいますし、キリッとした仕立ての良いスーツを着ていれば、印象も良くなるはずです。
リクルートスーツなどのデザインは、その典型です。リクルートスーツは、就職希望先の会社に好印象を与えることがデザインコンセプトですから、最大公約数の陳腐なデザインと色合いを目指したスーツと言えるでしょう。社会人として一人前になれば、自ずと自己表現のひとつとしてスーツの着こなしが上手くなるものです。オーダーでスーツを作る場合は、そのような自己表現としてのスーツが、既製服よりも自由に出来ると言えます。そのためには何着かスーツを作って、経験を積まなければなりませんが、それもまた楽しいものです。
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